牧師 小林佳雄
新緑がまぶしく、命の息吹を感じる五月を迎えました。新年度の緊張が少しずつ疲れとなって表れる頃でもあります。ところで、五月といえば「母の日」。普段は照れくさくて言えない「ありがとう」を伝える絶好の機会ですが、私はすでに天に帰った母のことを思い起こします。
私の生まれ育った家庭は争いが絶えず、母は若年性アルツハイマーなど多くの病に苦しんでいました。孤独の中でもがく母を前に、何もできない自分。私は「一日も早くこの生活から抜け出したい」と願い、心を閉ざして生きてきました。
そんな私のもとに、神様は一人のクリスチャンを送ってくださいました。明るい笑顔で訪ねてくれ、家族のために祈り、母の悩みを何時間も聞き、一緒に涙を流してくれる人でした。その愛の行いは十年以上も続きました。その姿に心が動かされ、「教会の先生に一度会ってみたい」と思い、教会に足を運びました。やがて母と私は洗礼を受けました。
それから年月が流れ、母が天に召されました。告別式の前夜、神様の深いあわれみを感じる出来事がありました。母があまり使っていなかった黒い巾着袋から、一通の手紙が見つかったのです。まだ母が自分の思いを言葉にできた頃に書かれたものでした。もしかしたら、永遠に埋もれていたかもしれません。
そこには家族や教会への感謝と謝罪、そして思いがけない言葉が綴られていました。
「お金で買えない健康や愛、優しさはみんな自分から消え去っていった……。神様はこんな母にも愛をくださっている。ありがとうございます。母は幸せでした。」
母が、最期に「神様の愛」と「本当の幸せ」を握っていたことがわかり、私は深く慰められました。
「しかし、私たちの国籍は天にあります。そこから主イエス・キリストが救い主として来られるのを、私たちは待ち望んでいます。」(ピリピ人への手紙 3章20節)
人生には思い通りにいかない苦しみや涙があります。しかし、この世の死は終わりではありません。私たちには帰るべき天の故郷があり、そこには永遠の愛が溢れています。お一人おひとりをデザインされた神様は、人生のどんな嵐の中でもあなたに目を留めておられます。ぜひ、この新しい季節、救い主イエス様を通して、変わることのない希望に触れてみていただければと思います。
